癌患者さんの痛みを緩和するお手伝い

癌の痛みと苦しみのケアホスピス

患者の身体と心に寄り添う鍼灸治療

当院は、鍼灸師として治療院内外でさまざまな患者を治療させていただいています。

治療院内では乳幼児から100才前後の方、病気が理由に来院することが困難な方へは、自宅や施設への往診治療をおこなっています。

日々、治療を通して多くの方と出会い、身体的苦痛、精神的苦痛などに対して、多くのコミュニケーションをとりながら苦しむ体と心に触れています。

「鍼灸師として何が出来るのか」

このテーマについて患者さんお一人おひとりで違うため、とても考えさせられます。

ご本人が癌を患った方、家族が癌を患った方、お知り合いが…など
病気を患った家族を支えようと一生懸命になり、自分自身も体調を崩してしまう方も少なくありません。

患者さん、そしてその家族も他人に愚痴や弱音を吐いたり、相談したり、たわいもない雑談をすることも難しくなってしまうものです。

私たち鍼灸師は、その中に入り、肌に触れて身体をみながら治療を重ねていき、心の奥にある思いを引き出し、身体的、精神的な痛みを緩和し寄り添っていきます。

その中で信頼関係が築かれ、ときには心の拠りどころとなっているのではないかと考えています。

気持ちを受け止めてくれる人、話を聞いてくれる人ができることで、患者さんの心と体が休まることができるようになると思います。

そもそも、ホスピスは人間らしく、自分らしく生きるためにある拠り所。

WHOでは

「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフを改善するためのアプローチである。」

と定義しています。

ホスピス(緩和ケア病棟)は、癌の終末期(余命約半年以内で治療が難しいと考えられる時)の

「患者さんの身体の苦痛や精神的な苦悩を和らげ、残された大切な時間を、その人がその人らしく過ごせるようにする」

ための医療施設です。

そこでは、必要な医療とともに人生の最期をより有意義に、悔いなく過ごすためにあたたかいケアを提供することを目的としています。

がん患者さんの在宅鍼灸治療
がん患者さんの在宅鍼灸治療

当院では、この考えを尊重し、近年できる限り住み慣れた在宅での生活を続けられるように心身ともにケアすることを重要視しています。

鍼灸師は、医師のように手術や薬を処方するなどはできませんが、病気や症状の重症度に関わらず、体や心の痛みなど幅広い治療をおこなうことができます。だからこそ、そこに関わる皆さんの治療に携わることができます。

鍼灸師だからこそ、患者、家族の身近な存在として全人的な苦しみを支え、より一層患者のためにつながるよう治療に臨む必要性があると感じています。

生きるのが楽しく思えるようになった

すべての患者さんにそう言っていただけるよう、まっすぐ向き合っています。

緩和の理念

すべての人が「その人らしい人生を全う出来る様に」

人生を「より豊かで意義深いものにする」ための機会づくり

緩和ケアのポイント

1. がんによる痛みなどの辛い症状を十分に取り除いてあげる

ホスピスでは先駆的な取り組みがなされ、
ほとんどの痛みは取り除けるようになってきています。

2.患者さんとのコミュニケーションを大切に

治療が望めない患者さんに接することに医療スタッフも家族も友人も、無力感を味わい戸惑います。

何を話していいのかわからなく、会話は少なくなります。

こういう時にこそ、患者さんは誰かとの触れ合いを求めているのに、その相手がいなく孤独な気持ちはますます強くなります。

十分なことはできなくても、「私たちは患者さんのそばにいることができる」 という気持ちが大切。

3.家族のケア

家族も患者さんと同じ様に悲しみに包まれてます。
家族をもケアの対象にしていくところは今までの医療になかった点です。

グリーフケアとは

がん患者さんからのグリーフケア

グリーフケアとは、家族との死別が引き起こす悲嘆を緩和するケア、つまり遺族となった方へのケアのことをいいます。 死別とは誰もがいつか経験しうるものではないかと思います。時には病で時には事故で時には天災で別れは急にかもしれません。残された遺族はその悲しみをどう受け止めたらよいのでしょうか。 グリーフケアは、実は鍼灸院でもおこなわれていることです。 当院は、普段の診療中から終末期の患者さんやそのご家族の治療をしており、ご家族の容態が良くない、余命間もなくて・・・といった苦悩を口にできる場にもなっています。 亡くなられる前から、お話しに耳を傾け、死別された後には生前を振り返りながら悲しみを心の中に留めず、悲しみを共有する場、表現して良い場、思い出を語る場となっています。 そのようにして、少しずつ心の中を整理されていくのに私たち鍼灸師はずっと寄り添っています。それが鍼灸院でできるグリーフケアのひとつではないかと考えています。

緩和ケアの臨床研究と改善

死の臨床研究会

平成30年、死の臨床研究会年次大会in新潟にて「患者の身体と心に寄り添う鍼灸治療」について臨床発表させていただきました。

発表では少子高齢化による癌やパーキンソン、脳梗塞などの介護、看病の大変さ、患者さんとご家族の心のケアには細心の心配りが必要ということ。終末期を迎えた時のホスピス緩和ケアとして鍼灸師がおこなえることを実体験からご紹介しました。

このような、経験とまとめ、発信することで、患者さんやご家族に対し、さらなる充実したケアができればと思っています。

末期肺がん患者を通して

死の臨床研究会

平成27年10月11日、第39回日本死の臨床研究会年次大会~自分らしく逝くために~ 岐阜大会にて鍼灸師初となる講演とポスター発表を行いました。

緩和ケアにおいて鍼灸師として患者さんを診ることがありながら、医療チームとして加わり、このような研究会で発表ができたのは鍼灸業界で初めてのことです。テーマは、「肺がん患者を通して鍼灸師ができること」でした。

最初に出会ったときの患者さんは一歩進むにも肩で息をし辛そうでした。病院で積極的な治療をしても改善されず状況は悪くなるばかり。そのため当院で鍼灸治療を開始し、同時に豊橋医療センター緩和ケア病棟と連携し、入院中でも病室で鍼灸治療をさせていただきました。ただ辛い治療をするのでなく、痛みのコントロールや精神的不安のケアをすることにより患者さんに笑顔が戻ってきました。

この会と臨床の現場を通して、末期がん患者さんとそのご家族について、医療や看護・介護の現場に限らず人としてできる真の援助について考えていくことを追求していきたいです。

終末期におけるツボ療法

死の臨床研究会

平成27年日本死の臨床研究会年次大会in岐阜

日本死の臨床研究会年次大会で講演をおこないました。

この講演では、終末期いわゆる末期癌患者さん自身と、その患者さんに携わる方々に対して、充実した生活を送れるための「ツボ」の活用事例をを講演しました。

人は、それぞれ生活環境、性格等異なりますので、「その人」に合った対処法をおこなわなければなりません。

講演では、「鍼治療」、「灸治療」、「ツボ」についてご紹介し、ホスピスと鍼灸治療の関係を理解していただきながら様々な場面であらわれる症状に対して、ツボの選び方と刺激方法をご紹介しました。

この大会のメインテーマである「自分らしく逝くために」

にあるように、自分らしい生き方を送れるよう、患者さんだけでなく周囲の方々のケアも必要になってきます。

ホスピスに対して鍼灸治療という分野がどこまで関係するのかご存知ない方がほとんどですが、まずは今回の講演で医療関係者に鍼灸治療の考え方をご理解いただけたらと思います。

ホスピスに携わる医療従事者と家族に向けたツボ療法

死の臨床研究会

平成26年 生と死を考える会全国協議会全国大会in豊橋

生と死を考える会全国協議会全国大会で、患者さんではなく「ホスピスに携わる医療従事者と患者さんのご家族に向けてのツボ療法」について講演しました。

講演では、鍼灸治療とホスピスの関係性や、症状別のツボの使い方を実演、実際に来場された方々全員にも体験していただきました。

癌という病気は、介護同様に長丁場になるケースも少なくありません。そのため、一般的には、病気といえば患者さんですが、癌を患った時、患者さんだけでなくそのご家族や、献身的な看護で疲れてしまう医療従事者に対してのケアも必要となります。鍼灸治療では、このような患者さんに関わる全ての人のケアができる手段です。

東洋医学とツボ

死の臨床研究会

平成21年日本死の臨床研究会年次大会in名古屋

1977年に創設された日本死の臨床研究会は「死の臨床において、患者や家族に対する真の援助の道を全人的立場より研究していくこと」を目的とした医師や看護師、鍼灸師やさまざまな療法家・宗教家などの参加する研究会です。2009年に名古屋市で行われた全国大会では、「東洋医学とつぼ」を主題として講演を行いました。

講演では、全国から集まった医師や看護師等に対して東洋医学と西洋医学との違いや臨床現場における東洋医学・鍼灸治療の有用性、病院等との連携や包括的なケアの現状と今後の展望について考えを述べました。

東洋医学は病気・病因だけを診るということはなく、患者の体そのものを診て苦痛に対して治療を行います。だからこそ、終末期に苦しむ患者の身体的な苦痛のみに手を当てるということはなく、心身一如の考えで広くとらえて心身ともに苦痛を和らげられるように患者を診ていきます。

終末期を迎える患者やその家族にとって、残されたいのちの時間はより尊いものです。西洋医学を主体とした病院でのケアもひとつの方法ですが、東洋医学を扱う鍼灸師だからこそできるケアもあると考えています。

豊橋ホスピスを考える会定期勉強会

死の臨床研究会

当院は、がん患者さんに関係するホスピス緩和ケアにも携わっています。
独立行政法人国立病院機構豊橋医療センターでは定期的に

「ホスピス緩和ケアとはなにか」
「がんの痛みや苦しみを和らげる」
「がん患者との会話、家族のケア」
「ホスピス運動とボランティア」

等を筆頭に、同センターの副院長である佐藤 健先生が定期開催している、がんの末期にどんな症状で苦しむのか、どのように症状をコントロールするのか、モルヒネについての正しい知識についてなどの勉強会に参加しています。

がん患者の痛みの性質は

  1. 痛みがいつまでも続くということ
  2. 身体的原因による痛みが精神的なもので修飾されること
  3. 鎮痛薬が効く痛みが多い


など実際の臨床を通しての佐藤先生の経験や知識を教えていただきました。
またモルヒネに対する誤解や偏見として

  • 寿命が縮む
  • 中毒になる

などを例に挙げ、それぞれ正しく投与される限り

  • 危険はなく痛みなく快適に過ごせる
  • 痛みを訴える患者さんに投与する限り中毒にならない

など一般的に間違って知られている内容についても講演しています。

鍼灸は痛みへのアプローチを得意とする治療法です。がん患者さん、そのご家族、不幸にも他界された方の御遺族に対して特有の苦しみを側で寄り添い、心もカラダもケアできるのが鍼灸師です。

近年は、20代、30代など若い世代の女性でも乳癌、子宮癌等にかかるケースが増えています。患者さんに寄り添う医療を目指しながらも患者さんが最期を迎えた時、残された遺族の方のケアも必要になります。

いのちのかけはし東三河をホスピスの郷へ

いのちのかけはし東三河をホスピスの郷へ

この会は東三河が中心となりホスピス運動を全国へ広げ盛り上げていこうというものでその第一歩として開かれました。

主催者の「かけはしの会代表」山田さんからは様々な活動を通して市民全体で力を合わせホスピス運動を広めていきましょうというお言葉がありました。

かけはしの会とは東三河をホスピスの街にしたい という願いから山田さんが発足したもので医療関係者から一般の方まで多くの人達で活動しています。

発足講演会講師は

国立病院機構豊橋医療センター副院長で緩和ケア部長の佐藤健先生。
福岡市に開業し在宅医として活躍されているにのさかクリニック院長の二ノ坂保喜先生。
東京で在宅医療にも携われ死の臨床研究会の代表でもあるケアタウン小平クリニック院長の山崎章郎先生。
岡村昭彦の会世話人で評論家の米沢慧先生です。

先生方は、ホスピスという分野がまだ全く認知されていない時代からホスピスの必要性を感じ病院改革や研究会等を今日に至るまで続けておられるホスピス会の豪華メンバーです。

講演では、105歳でなくなられた日野原重明先生の生前の活動やホスピスの歴史、またホームホスピスをされている方のお話や課題 市民運動の大切さなどのお話がありました。

みなさんホスピス運動と聞くと、どの様なイメージがありますか。
ホスピス運動の第一人者である岡村昭彦の言葉によると

  • コミュニティの中で生命の質を高める生活をしながら
    「死にゆく人」を中心にケアしようというのがホスピス運動
  • ホスピス運動は地域社会の中で1人1人が参加できるボランティア活動
  • ホスピス運動は死んでいく人の世話を通して死にゆく人から学ぶこと

などがあります。

今回の先生方からも、ホスピスはまだまだ誤解や偏見が強く、正しく理解されていないことや、在宅死・病院死のかたちはひと様々ですが、看取りは家族や近しい人がしその方の最期を見届けることでいのちについて考える、学ぶことが大切だと話されていました。

佐藤健先生からは、鍼灸マッサージ師が医療の場に出て共に患者さんのために関わりを持ち始めているということも話題にあがりました。

鍼灸師は、がん患者さんやそのご家族が少しでも快適に楽しく過ごせる様、苦痛を取り除いたり、ご家族とコミュニケーションをとりながら心のケアも含め治療を行っています。

今回の講習会を通して医師、看護師、介護福祉士、心理カウンセラーの方など沢山の方達と交流する事ができました。

ホスピス家族会

死の臨床研究会

豊橋医療センターにおいて緩和ケア病棟主催「家族会」のボランティアスタッフとして参加しています。

最大規模の緩和ケア病床数をもつ豊橋医療センターでは、緩和ケア病棟で亡くなられた患者さんのご家族を対象に、年に2回「家族会」という形で大事な家族を亡くされたご遺族の方々が悲しみ、辛さ、孤独感を話し共感する事で心が癒される事を目的とした活動をおこなっております。

患者さんが入院中に献身的な治療や看護をおこなってくれた医師や看護師さんをはじめ、多くの医療スタッフと改めて会話をすることにより、その時に伝えられなかった苦しみや不安といった感情から患者さんに寄り添って最期を看取ってもらえたことへの感謝の気持ちなどを再度伝えることができるとても大切な時間です。

癌という困難な病に対して、患者さんが最後まで人らしく生活を送ることができるため、また患者さんと死別した後もご家族が心穏やかに生活ができるため緩和ケアが存在しています。

どんなに治療が困難な病でも人は心に寄り添い 支えることがことができます。私たち鍼灸師も痛みや病気で苦しむ患者さんに寄り添って治療をおこなってく気持ちを忘れない家族会でもあります。

地域に根差したホスピスボランティア

死の臨床研究会

毎年12月のクリスマスの時期に、豊橋ホスピスの会主催のクリスマス会へボランティアとして参加をしています。

クリスマス会では、ホスピスに関心のある市民のみなさんが自ら楽器を手に持ち、演奏を発表してくれる心温まる会となっています。演奏者の中には、過去に自身ががんを経験し、苦痛を乗り越えて参加されている方もおられます。病気のある人もそうでない人も、同じステージに上がり、同じ時間を過ごすのです。私たちも鍼灸師という枠を越えて、ひとりの人としてステージのサポートに回り、ともに音楽を楽しみ、時間を共有します。

ホスピスというと、どうしても「最期の場」「死に近い場所」とマイナスイメージを抱きがちですが、本当は、死の淵にあっても自分らしく生き抜くためのサポートやケアのある場なのです。病に伏した人を支えていくのは、私たち「人」です。ホスピスのボランティアという場を通して、人と人とのつながりの大切さや、病を持っていたとしても誰かとつながり生きる希望を最期まで持ち続けることができるということを感じられます。私たちはひとりの人として、そして鍼灸師として、苦痛を訴える人に何ができるのか、そんな学びを得られる場でもあるのがホスピスボランティアです。

些細なことでも早めにご相談ください

病気になって気になること、看病していて気になること、看病疲れで辛い時、どんな些細なことでも構いません。周囲の人に気を使わず、まずは早めにご相談ください。